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大阪地方裁判所 平成6年(わ)2119号 判決 1995年6月30日

本店所在地

大阪府交野市寺二丁目三番一六号

大和電装株式会社

右代表者代表取締役

田中章司

本籍

大阪府交野市寺二丁目一四七一番地の一〇

住居

同府同市寺二丁目三番一六号

会社役員

田中章司

昭和九年一〇月七日生

本籍

熊本市万町一丁目一三番地

住居

大阪府交野市私部六丁目二一番三号

林田正幸

昭和一七年一月七日生

主文

被告人大和電装株式会社を罰金二二〇〇万円に、被告人田中章司を懲役一年に、被告人林田正幸を懲役一〇月に各処する。

この裁判確定の日から、被告人田中章司及び被告人林田正幸に対しそれぞれ三年間その各刑の執行を猶予する。

理由

(犯罪事実)

被告人大和電装株式会社(以下被告会社という。)は、資本金二〇〇万円で設立されたが、昭和五二年二月に四〇〇万円、平成三年七月に八〇〇万円、同年八月に二〇〇〇万円に増資され、大阪府交野市寺二丁目三番一六号に本店を置き、塗装業等を営むもの、被告人田中章司は、右被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているもの、被告人林田正幸は、税理士として、被告会社の税務書類の作成、税務申告等の業務に従事していたものであるが、被告人田中章司及び被告人林田正幸は共謀の上、被告会社の業務に関し、その法人税を免れようと企て、

第一  平成元年九月一日から平成二年八月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が、別紙1の修正損益計算書記載のとおり、一億四九八五万八七七九円で、これに対する法人税額が、別紙4の(1)の税額計算書記載のとおり、五八九三万七二〇〇円であるにもかかわらず、仕入を架空計上するなどの行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年一〇月三一日、大阪府枚方市大垣内町二丁目九番九号所在の所轄枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が、別紙1の修正損益計算書記載のとおり、一四四三万一一二〇円で、これに対する法人税額が、別紙4の(1)の税額計算書記載のとおり、四七八万一五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙4の(1)の税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税五四一五万五七〇〇円を免れた、

第二  平成二年九月一日から平成三年八月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が、別紙2の修正損益計算書記載のとおり、七八五六万七七三四円で、これに対する法人税額が、別紙4の(2)の税額計算書記載のとおり、二八四四万四六〇〇円であるにもかかわらず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年一〇月三一日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が、別紙2の修正損益計算書記載のとおり、一〇〇九万二一〇九円で、これに対する法人税額が、別紙4の(2)の税額計算書記載のとおり、二七六万六五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙4の(2)の税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税二五六七万八一〇〇円を免れた、

第三  平成三年九月一日から平成四年八月三一日までの事業年度における被告会社の所得金額が、別紙3の修正損益計算書記載のとおり、四九五七万八五六一円で、これに対する法人税額が、別紙4の(3)の税額計算書記載のとおり、一七五五万六六〇〇円であるにもかかわず、前同様の行為により、その所得の一部を秘匿した上、同年一一月二日、前記枚方税務署において、同税務署長に対し、右事業年度の所得金額が、別紙3の修正損益計算書のとおり、一二二五万一二四九円で、これに対する法人税額が、別紙4の(3)の税額計算書記載のとおり、三五五万九〇〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、別紙4の(3)の税額計算書記載のとおり、右事業年度の法人税一三九九万七六〇〇円を免れた。

(証拠)

判示全事実につき

一  被告人田中章司及び被告人林田正幸の当公判廷における各供述

一  第一回公判調書中の被告人田中章司及び被告人林田正幸の各供述部分

一  被告人田中章司の検察官に対する各供述調書

一  被告人林田正幸の検察官(平成六年七月五日付二一丁のもの、同月一二日付一七丁のもの、同月一三日付)に対する各供述調書

一  西岡正子、曽根フミ子及び倉員紘一の検察官に対する各供述調書

一  検察事務官作成の同年六月二〇日付捜査報告書

一  大蔵事務官作成の平成五年六月二五日付(検察官請求番号九、二四、三一)、同年七月五日付(同一一)、同月一日付四通、同年六月一八日付、同年七月一六日付各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の同年一〇月一日付証明書

一  登記官作成の各法人登記簿謄本

判示第一、第二の各事実につき

一  大蔵事務官作成の同年六月一六日付(検察官請求番号一二、一六、一七、二一)、同年七月五日付(同一五、二二)、同年六月二三日付各査察官調査書

一  検察官作成の捜査報告書

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の同年六月二五日付(検察官請求番号三〇)査察官調査書

一  大蔵事務官作成の同年七月二六日付証明書(同五)

判示第二、第三の各事実につき

一  被告人林田正幸の検察官(平成六年七月五日付二五丁のもの)に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の平成五年六月二五日付(検察官請求番号一九)査察官調査書

判示第二の事実につき

一  被告人林田正幸の検察官(平成六年七月五日付五丁のもの、同月九日付)に対する各供述調書

一  大蔵事務官作成の平成五年六月一六日付(検察官請求番号一三、一八)、同月二五日付(同一四、二〇、二五)、同月二一日付各査察官調査書

一  大蔵事務官作成の同年七月二六日付証明書(同六)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の同月一四日付査察官調査書

一  大蔵事務官作成の同月二六日付証明書(同七)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為は、いずれも平成七年法律九一号の刑法の一部を改正する法律附則二条一項により同法による改正前の刑法(以下、旧刑法という。)六〇条、法人税法一五九条一項(被告人林田正幸については、更に旧刑法六五条一項を適用)に各該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は旧刑法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で、被告人田中章司を懲役刑一年に、被告人林田正幸を懲役一〇月に各処し、情状により同法二五条一項を適用して、被告人両名に対し、この裁判確定の日から三年間右各刑の執行を猶予する。

更に、被告人田中章司の判示各所為は、被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示各所為につき法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同法二項を適用して罰金の額を免れた法人税の額以下とし、以上は旧刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪の罰金額の合算額の範囲内で被告会社を罰金二二〇〇万円に処することとする。

(量刑の理由)

本件は、塗装業を営む被告会社の代表取締役として業務全般を統括している被告人田中章司と被告会社の顧問税理士をしていた被告人林田正幸が、共謀して、被告会社の平成二年度から同四年度までの三事業年度で合計九三八三万一四〇〇円の法人税を逋脱した事案で、逋脱額が多額であり、逋脱率も三事業年度平均で約八九・四パーセントと高率の事案である。そして、逋脱の方法は、会社の所得に見合う税金を納めれば残りは裏金にしようというものであり、動機において特に斟酌すべきものはなく、また、虚偽の請求書を作成して架空あるいは水増しをした経費を計上するなどした所得秘匿の態様が巧妙悪質であることなどを考慮すると、被告人両名の責任は重いというべきである。

しかしながら、被告会社において、現在までに本件逋脱に係る法人税本税、重加算税、延滞税すべての納付を終えていること、脱税再発防止のためのコンピューターによる会社業務改善システムを構築して実行に移している段階にあること、被告人両名には前科がなく、本件事実を素直に認め真剣に反省していると認められること、被告会社及び被告人両名とも社会的制裁を十分に受けていることなど、被告人両名及び被告会社のために考慮すべき事情が認められる。

更には、被告人林田正幸は、被告会社からの顧問料が収入中に占める割合が大きいことから、従属的な立場で本件に関与していること、本件によって得た利益も、被告会社の納税の一部に使用したり、損害賠償等に費消してしまい、手元に残っていないことなどの事情が認められる。

そこで、以上の諸般の事情を総合考慮して、被告会社及び被告人両名をそれぞれ主文掲記の刑に処した上、被告人両名に対しては、それぞれその刑の執行を猶予するのが相当である。

よって、主文のとおり判決する。

(出席検察官)遠藤太嘉男

(出席弁護人)被告会社及び被告人田中につき細谷明、被告人林田につき田宮敏元

(裁判官 田中正人)

別紙1

修正損益計算書

<省略>

別紙2

修正損益計算書

<省略>

別紙3

修正損益計算書

<省略>

別紙4の(1)

税額計算書

<省略>

別紙4の(2)

税額計算書

<省略>

別紙4の(3)

税額計算書

<省略>

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